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recent〈ONE PIECE〉

第1章 21時の邂逅


 真っ赤な提灯が幾つも下がる九戸茶語(チウフーチャーユィ)の最上階。時刻は19時前後。町と基隆(ジーロン)湾とを遠く見渡せるこの場所は、賭場にしては情緒ある良好なロケーションだった。
「おれァ半だ…!」
「じゃあ、わたしは丁!」
 男たちに混ざり、丁半で盛り上がるこの女。うら若い乙女がこのような粋な場で賭博なんぞ、と、考える男はもはや誰一人いない。
 これまで女は百発百中。男は次で掛金が底をつく。ギャラリーが固唾をのみ見守る中、壷振りの姉さんの無情な声。
「丁」
 盛り上がるわ、盛り上がるわの大喝采。
「いやあ、嬢ちゃん強えな」
「カタ無しだぜ、まったく!」
「ジョーちゃんに2万ベリー賭けてたのよ、おれァ中(あた)りだ」
「ここまで中(あて)ちまうたぁ、イカサマかあ?」
 賭けに賭けるとはまったくもって品性の欠片もない観客である。陽気に騒ぐ男連中の中に一部交ざる、恨めし気な視線。彼らが密やかに声を交わしていたのを見る者は一人もいない。
 九份(ジォウフェン)は、島の北部の港町基隆(ジーロン)の近郊に位置する海辺の町である。街並みはワノ国統治時代の面影を色濃くとどめており、当時の酒家(料理店)などの建物が数多く残されている。
 ワノ国の、花の都とは似つかずともオリエンタルの代表と言っても遜色無い景観である。簡単に説明するならば、ワノ国の町並みと華ノ国を混ぜ込んだような情緒ある町と言える。
 これから数十分後には、 九戸茶語(チウフーチャーユィ)の下、色々な物がオモチャ箱のように敷き詰められた怪しくも賑やかな廟口夜市(ミャオコウヨイチ)で、生死を問うマラソンの火蓋が切って落とされようとしていた。
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