第27章 翔ぶ
「ええ、まぁ…」
はたから見れば “遊び歩いている” 任務であるからして、堂々と “はい、大変です” とも言いにくい。実際に皆が汗水をたらしているときに、着飾ってショッピングをしたりお茶をしたり食事をしているのだから。
そんな想いから言葉を濁しがちなマヤの言葉に気づきもせずに、
「でもまぁ、それもあとちょっとの辛抱だよ! 貴族のボンボンの気まぐれなんかすぐに冷めて、王都に帰っていくだろうからね!」
とマヤの背中をばしっと叩くと、マーゴは豪快に笑って去っていった。
「行ったね、マーゴさん。もう兵団中、噂が広まってホント大変!」
大口を開けてすごい勢いでパンを食べながら、ペトラが顔をしかめた。
「ペトラ、ありがとう。ちょっとどういう風に答えたらいいかわからなかったから、助かった」
「いいっていいって! マーゴさんはぐいぐい来るんだから、ノリで返しとけば大丈夫なんだって」
「……そうなの?」
“ノリで返す“ なんてことは自分にはできそうにないなぁと、マヤは思った。
「そうだよ、マヤみたいに馬鹿正直になんでも答えなくっちゃってならなくてもいいときもあるの!」
ペトラはバチッと片目をつぶってから、つづけた。
「ところでこの一週間、なかなか時間が合わなかったじゃない? 正直なところ、私も耳に入ってくる噂を全部信じてる訳じゃないけどさ…、でも一体どうなってるの? とか思ったりしてる。今日は私も調整日だし、今どうなってんのかじっくり聞かせてよ」
「うん、わかった」
「あっ、でも待った! 洗濯がたまってるから、午後にマヤの部屋に行くよ! いい?」
「いいよ、私も洗濯も部屋の掃除もしたいし…」
「OKOK、じゃああとで!」
いつの間にかマヤより先に朝食を食べ終えたペトラは、つむじ風のように去っていった。
ひとり残されたマヤは、まだ少し残っている朝食を急いでかきこんだ。