第5章 お互いにありがとう
ある日、彼女は泣いていた。
「どうしたの?」
僕がそう聞くと、彼女は更に泣いていた。
『私……死にたいの』
「そんな、どうして!?幸せだろ?」
僕の言葉に、彼女は首を横に振った。
『私は、出久を失うのが怖いの』
彼女の言葉に、僕は戸惑いを隠せなかった。
『私は貴方が大好き。だからこそ、失いたくないの。だから、私が先に死んだ方がいいの』
僕は泣いている奏を抱き締めた。
「僕も君が大好きさ。失うのも怖い」
そして、僕は言った。
「二人で死のう。この幸せが崩れる前に」
僕の言葉に、彼女がビクッと肩を震わせる。
『そんな……』
「二人で一緒に天国に行った方が幸せじゃん?だから、一緒に死のう」
僕は彼女にキスを落とす。
微かに塩の味がした。
『じゃあ……最高の歌を作ろう?誰の記憶に残るようなすごいものを……』
僕は頷いた。
「うん、一緒に作ろうか」
この後、ベッドに行ったことは言うまでもない。