【ONE PIECE】トラファルガー・ローに愛されて。
第6章 花筏。
スウェルside
* * * *
(シェリルの体を憑依している以上、この男は攻撃してこないだろう…、)
悪魔のような笑みで、高々と。
腹を抱えて笑い出す、憎悪だけの人魚の亡霊。
憎しみだけしか持っていない、空っぽの、何もない、亡霊だ。
私の存在なんて、そんなものだ。
誰かに憑依しなければ、自身の存在を証明できない。
(愚かだなんて、一番、自分が分かってるさ…ッ、)
「私の名は、スウェル・ルルーア」
「…………、」
「たった20数年生きた貴様よりも、何百年も生きた…、人魚にして、残酷で、残虐な魔女と呼ばれた────、」
──────バケモノだ、
「ハッ、」
彼は、小さく、吐き捨てたように、ハッ、と…一瞬だけ笑う。
私を前にして、余裕にも見えるその態度に、疑問を抱く。
俯いている彼が、スッ、と私を見た。
「────ぁっ、」
「………あァ?」
どうした?
人魚にして、残酷で、残虐な魔女様よ…。
『ただのガキ』に、睨まれただけだ。
それだけなのに、真夏日だというのに、身体がブルッ、と震えた。
低い、あァ?、という声を聞いただけで、たらり…、と冷や汗が垂れる。
(…なんだっ、)
具合でもわりィのか、魔女様…?
彼の声で、困惑している頭の中が、冷静さを取り戻した。
ニヤ…、と笑っている男が、目の前にいる。
自分はこの男を殺し、シェリルの精神を、完全に、修正不可能なほどに、破壊するのだ。
そして、身体の主導権を、完全に得る…ッ!!
右腕を伸ばし、彼を指差し、にっこり笑って、指を鳴らす。
「……Reidea(リーデア)、」
「────あ゛っ、」
(…捕まえた…)
黒い影が、彼を拘束する。
無数の手の形をした、漆黒の、海底のように冷たい、影。
喉をグッ、と握り、徐々に、ギリ、ギリ…、と、締めていく。
酸欠になって、苦しみ足掻く彼を見ていると、心底、晴れやかな気分になった。