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【ONE PIECE】トラファルガー・ローに愛されて。

第2章 花言葉。



*  *  *  *


『ねぇ…そこの、目つき悪いお兄さん、』
「…名前で呼べって言っただろうが。…なんだ、どうした?」
『向こう、に見えるのは海賊船じゃないのかなぁ』


穏やかな笑みをわざと作って。

その焦りもない呟きに、船員たちは一度動きを止め、何度も彼女の言葉を頭で響かせる。
そして、ようやくシャチがその方向を見て、表情を変えた。
ローはリトア島で奪ってきた、読みかけの医学書をパタンっと閉じて、横になっていた体を起こし、傍にあった刀を肩にかけた。

「敵襲だッ、戦闘準備しておけ」
『私も、初の参戦ってことでいいん…』
「お前は船の中にいろ」


簡単に、人質にされかねないからな。

私だって能力者だというのに、戦闘に参加することに、彼はまったく賛同してくれない。
女だから…?という考えが、頭の中を隙間なく埋め尽くす。
けれど、反抗する気はなく、機嫌が悪くなったけれど頷いた。

『気をつけて』
「あァ」
『何かあったら叫んでね』
「そうする」


私の居場所は、あなた、しかないんだから。

もう二度と会えない、恋人たちの秘め事のように、私は正面から彼をそっと抱きしめる。
ひどく驚いているのか、ローの口が小さく開き、瞳が大きく見開いた。
空いている左の手で、私に応える様に胴体を優しく抱きしめる。

(行って欲しくない)


ずっとこのままでいたら、いいのに…。

そう思いながらも、スッと手を離して。
船の中へと戻る途中、姿を影のように変え、霧のように消えた。
無意識に震えていた両手を、差し出すように目の前に出し、見つめる。
小刻みに痙攣しているような、白く細い指先たちを眺めていると、くす…っと、抑えきれなかった笑みが溢れた。

(あー、可笑しい)

『あの人は…、トラファルガー・ローは、』


私の中で、こんなにも大きな存在になっていた。

彼を失ってしまうのが、どうしようもなく怖い、と。
今すぐにでも…この部屋を飛び出したいと思うのは。
甲板に出て、彼と共に戦いたいと思うのは…。
ローが生きて帰って来ないと、心のどこかで思っているからだ。




―不安は、増幅していく―
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