第11章 迫られる選択
「ちゃんと伝えてなかった僕にも非はあるけど、本当に…危険なんだ。」
「危険危険って言われたって…私だってできるだけ関わりたくないし、でも都合よくそこだけ忘れることなんてできないし…」
「残念ながら多分もうそうは言っていられません」
「うん…嫌でも、関わることになるかもしれない」
「何?回りくどいのはやめよう?それを言うために呼び出したんじゃないの?」
何かあると臭わせながら、なかなか核心に触れない2人に柊羽はとうとう痺れを切らした。
「じゃあ、言うけど…」
「安室さんは、組織の人間だった。それも…かなり上層部の、ね。」
「そ、…っか…」
冷静を保てていただろうか。
安室には何か大きな隠し事があるとは思っていた。
思っていたけれど、その事実は考えうる最悪のもので。
まだ纏まらない思考の中、追い打ちをかけるように声をかけられた。
「それでも、続ける?今の関係。」
今の関係と言っても、あってないようなものだ。
やめようと言えば簡単に白紙に戻せる。
でも、自分の気持ちが、それを素直に選べない。
浅はかだな、と思う。滑稽だとも。
それでも…
「わからない。」
「もう利用されてるかもしれない!今後命の危険にだって晒されるかも…」
「そんなこと分かってるよ!!」
必死に抑えていた感情が溢れ出す。
新一はこんな柊羽を今まで見たことがなく、思わず口をつむんだ。
「じゃあ…皆は、大切な人と突然縁を切れって言われたら…っ納得できるの?」
「大切な、人って…」
「お互いの利害関係の為に交際を偽っていたのでは?」
沖矢にその話はしただろうか。
だが柊羽にとってそれはもうどうでもよかった。
「最初はそうでしたよ。透さんは今でもそうだと思います。でも、私はもう違う。」
「え、それって…」
「彼のお陰で、久しぶりに人生に光がさした。楽しいって思えるようになれた。例えそれが偽りの優しさだとしても、彼が組織の人間だとしても…今の私には透さんが必要なんです。2人のことを疑うわけじゃないけど、私は本人の口からそれを聞くまで、信じません!」
我ながら子供じみた言い訳だと思った。
でも、これが本心。