第11章 迫られる選択
あの事件の翌日、柊羽は新一から工藤邸に呼び出されていた。
正直、気は乗らない。
安室ともまだ連絡が取れていないし、工藤邸ということは…もしかしたら沖矢もいるかもしれない。
(あの人はなんか…苦手だ)
でもすっぽかしたらそれはそれで面倒だろうし、と渋々身支度を整えて目的地へ向かう。
(透さん、無事だよね?爆発とかあったみたいだし巻き込まれでもしてたら…
ポアロ行けば安否は確認出来ると思ってたのに…新一のばか!)
未だ想い人からの着信を告げないスマホを恨めしげに見つめるのだった。
「はあ。着いちゃったよ…」
あとはインターホンを押すだけなのだが、やはり気が重い。
新一の脅しに一度は屈したけれど、やっぱりポアロに行ってしまおうか…
「なーにしてんだよ」
「う、わぁ!?」
突然かけられた声の方を振り返ると、そこにはいつも通り気だるそうにポケットに手を突っ込みこちらを見ている従兄弟の姿。
「べ、別に何も…」
「ま、どーせ気が乗らなくて帰っちまおうか悩んでたって所だろうけど、もう諦めた方がいいぜ?」
「ちっ」
「おい」
こういう時ほど、探偵オタクというスキルが疎ましいことはない。
悪態をつくくらい許して欲しい。
「ほら、行くぞ」
「はいはい」
たまに、いやしょっちゅう、新一とのやりとりで柊羽は自分の方が年下だったか?と思うことがある。
いつもは別段気にしていないが今日は虫の居所が悪く、ついて行きながらべーっと背中に舌を出すというささやかな反抗で心の均衡を保った。
新一に促されリビングへ足を踏み入れると、そこにはやはり、彼がいた。
それも優雅に紅茶を飲みながらソファで新聞を読んでいる。
「おはようございます。お待ちしておりました。」
「おはようございます…」
「ほら、柊羽姉ちゃんも座ろ!」
「紅茶でいいですか?」
これはあれか。
長時間コースか。
ていうか沖矢さんは居候だしコナンは家主であって家主でないしなんなんだこの状況は。
コナン=新一は知らない体がいいのか。
沖矢さんはどこまで知ってるんだ。
ここに来る前にそういう情報教えてよ新一のバカ。
心の中だったが、柊羽は珍しく饒舌になっていた。