第9章 リンクする思い出
あの日以降も、柊羽は変わらずポアロへ足を運んでいた。
柊羽が心配していた売上も全く落ちていないようで…
なんでも、「あの顔なら遊び放題なのに、彼女に一途なあむぴイケメン!!」と、JKたちの評価は別の方向へ急上昇したらしい。
安室の懸念材料だったスキンシップもなくなり、柊羽はこんなことで役に立てて何よりだと安心していた。
「柊羽さん、安室さんとは順調ですか?」
「えっ?ま、まぁ…ぼちぼち?」
「いいなぁ~!安室さんって、ずっとあんな感じなんですか?」
「あんな、って?」
「んー敬語で、かしこまった感じっていうか…」
「あー…」
柊羽は返答に困った。実際はそうだが、恋人同士で敬語なんておかしいかもしれない。嘘をついた方がいいのかどうしようか迷っていると…
「梓さん、あまり詮索しすぎないでくださいね。僕達にもプライベートってものがありますから。」
噂の人物の登場に、柊羽はこれで嘘をつかなくて済んだとホッとしていた。
「はーい」
と、梓は渋々了承していた。
「ところで、これから毛利さんのところへ差し入れを持って行ってきます。少し抜けても大丈夫ですか?」
「お客さんもいないし、平気ですよ!」
「よかった。柊羽さんも一緒にどうです?」
ニコリと笑顔を向けられて、そういえば小五郎さんにしばらく会ってないな、と頷いた。
探偵事務所に入ると、小五郎と蘭とコナンがテレビの前に集まっていた。どうやらニュースを見ているようだ。
___これが今回公開された3人組の強盗犯の映像です。
今朝、自分もニュース番組で見た報道だ。強盗に入られた銀行の職員が一人、強盗犯に歯向かい銃で撃たれ死亡。駆けつけた警察官も逃走者にはねられ怪我をしたらしい。
探偵事務所の面々が報道に関してあれこれと論議しているところに自然と安室が会話に加わり、皆を驚かせていた。
「なんでお前がここに!?」
「お世話になっている毛利先生にサンドイッチのサービスを!それと柊羽さんも久々に先生に会いたいと。」
「おぉ!お前もいたのか、久しぶりだな。…柊羽?」
___犯人たちは未だ逃走中で、重体の警察官も意識不明ということです。
アナウンサーの無機質な声が、脳内に響いた。