第6章 明らかになる過去
安室は1人、夕飯の支度をしていた。
柊羽はベッドに寝かせている。
寝顔を見ながら、ふと考えていた。
柊羽と出会ってから、少し心が穏やかになった気がしていた。
探偵、組織、そして公安という三足の草鞋を履く自分には、そんな気持ちなど許されないと、そんな暇はないと思っていた。
まだ特別な感情を抱いているという訳では無いにしろ、彼女との会話は楽しいし、今の状況を心配しているのは本心だ。
ただ、気になるのは________
『はじめまして。先週からこ…』
『っ!!』
あの時の、驚いた顔。
本当に、どこかで会っていないだろうか?
自分も彼女には既視感を抱いたような気がするがやはりそれは確かではなく。
公安の仕事の時に接触した?
それとも、組織の………だとしたら、あまり穏やかではない。
できれば前者であって欲しい。そう思っていると
「ん…」
と、柊羽が身じろいだ。そちらに目をやってみるが、どうやら寝言のようだ。
「…じ、ん」
「!!」
その二文字に安室は反応した。
(ジン…?まさか、な。)
人名かどうかも分からないし、それが二文字の単語だったのかどうかも分からない。
だが気になるのは事実で、安室はスマホに手を伸ばす。
「風見、すまない。例の件とは別に至急調べてくれないか。坂巻柊羽という人物の素性が知りたい。」
『個人、ですか。降谷さんにしては珍しいですね。』
「余計な詮索をする暇があるのか?」
『す、すみません!すぐに調べて連絡します!!』
連絡先は公安の部下だった。
彼女のことを疑うような真似は気が引けたが、どちらかと言えば何も組織とは関係ないということを確認して安心したいという気持ちの方が大きかった。
(なんとも身勝手な理由だな…ん、美味い)
夕食も作り終え、柊羽の分をとりわけラップをする。