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透明な約束【名探偵コナン/安室】

第17章 昔話


ふわふわ。

ふわふわ。

体は満身創痍のはずなのに、陽だまりの中にいるような心地良さ。


たしか、瓦礫に閉じ込められそうになって…


そうだ。
透さん。


段々と頭のモヤが晴れていくような感覚。
自分は眠っていたんだと理解して、ゆっくりと目をあけた。


白い天井、腕に繋がれた管、点滴…?
ここは病院かと理解したその時、響いた声が柊羽の意識を完全に現実世界へと引き戻した。



「柊羽…?」



ゆっくりと、その声の元へ顔を向ける。



「透さん…」



今度は自分の声で。確かめるように呟いた。
柊羽の傍らで目が覚めるのを待っていたであろう安室はパイプ椅子から立ち上がりゆっくりと距離を縮めていった。



そして伸びてくる腕に、思わず抱擁を期待してしまった柊羽だが待ち受けていたのはおでこの痛み。



「ったぁ…!」



予期せぬ痛みに多少涙目になりつつ何とか不満を訴える。
まさかデコピンをされるとは。
なぜ、と顔に出ていたのだろう。安室はため息をつきながらその声なき疑問に答えてくれた。



「帰る場所を用意してくれるんじゃなかったのか?」



そう言えば、必死すぎて忘れていたけれど、確かに観覧車でそんな会話をした気がする。
心当たりがあった柊羽は素直に謝る他なく。



「…ごめん、なさい。」

「逃げるのを諦めてなかったか?」

「う…もう無理だと、思って…」



素直にそう告げれば、今度は盛大なため息が聞こえた。
恐る恐る表情を伺えば、再びこちらに伸びてくる手が確認できて柊羽は二度目の痛みに備えぎゅっと目を瞑ってしまった。
自分に非があるのは明らかで、お咎めを受けるつもりだったのだが、



「無事で、良かった。」



今度こそ温もりに包まれていた。
柊羽は横たわったまま、おずおずと安室の背中へと自分の手を添える。
それに気付いた安室の抱擁が、少し強くなった気がした。



「心配かけてごめんなさい…助けてくれて、ありがとう」

「何があっても必ず戻ると、約束しただろう?」

「約束…」



『守れない約束なんてすんなよな、ったく』



たかが口約束かもしれない。
でも柊羽にとっては大きな意味を成すものだ。
それは松田も教えてくれていた。
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