第14章 緋色の真実
工藤邸からの帰り道、柊羽は沖矢から聞いたことを整理していた。
組織で能力を認められると、お酒の名前のコードネームが与えられること。
つまり透さん…バーボンはそれだけ働きが認められているということ。
他に注意すべきは、変装の達人ベルモット。
それからジンという、金髪で長髪の極悪非道らしい男。
確か、2人の狙撃手の名前も聞いたが、この2人は直接対峙することはまずないので気をつけたところで意味が無いと恐ろしいことを言われた。
まだまだ忠告し足りないといった様子だったが、今回は流石に頭がパンクしそうだったので勘弁してもらった。
自分の知らないところでそんな恐ろしい組織が存在したなんて。
知らぬが仏とはよく言ったもので。
なんてことないニュースひとつとっても、組織が絡んでるのではないかと疑ってしまいそうだ。
あの日、博士の家に行っていなければ。
幼児化した新一と初めて遭遇したのは他ならぬ柊羽で、そのお陰で偶然組織について知ってしまったのだ。
その時に、こんなに危険な組織だと知っていれば。
立ち向かおうとする新一を何がなんでも止めたのに。
まあ新一のことだ、聞く耳は持たなかったかもしれないけれど。
そんなタラレバばかりが浮かんでしまう。
それにしても。
"ゼロ"
安室からは何も聞いていなかったが、柊羽はその名がどうも引っかかっていた。
友達にそんなあだ名の子がいたらまず忘れないはずだし、どこかで聞いたのだろうか。
例えそうだとしても、安室に関係あるかどうかなんて分からなかったので、柊羽は敢えてあの二人には伏せておいたのだ。
(聞いたことあるかも、なんて言ったら質問攻めされるのが目に見えてるし…)
想像しただけでげんなりした。
大切なことなら、きっとその内思い出すだろうと悠長に考えていた柊羽の目にある物が留まった。
「透さん?」
それは、道路を走る見覚えのある白のRX-7。
スピードを落とさずこちらへ向かってくるところを見るとこちらには気づいていないらしい。
車はそのまま柊羽の横を通り過ぎた。
その一瞬でも、柊羽は見逃さなかった。
「女の、人…」
助手席に乗るお似合いの美女に、心がチクリと痛んだ。