• テキストサイズ

透明な約束【名探偵コナン/安室】

第14章 緋色の真実


とある日のこと。
身支度を整えながら、安室はあのデートの日を思い出していた。



正直、もう潮時かなと思った。
隠し事をしながら付き合うフリをする自分。
嘘で固められた存在に嫌気がさすだろうと思っていたし、その覚悟もしていた。

けれどどうだ。
あの柊羽という女性は、それを知ってもなお受け止めてくれた。
それどころか恩返しをしたいとまで言ってのけたのだ。

少しでも彼女を疑った自分が情けない。
ミステリートレインで赤井に扮したベルモットを追いかけようとした柊羽に、カマをかけた。

知り合いではないという裏付けが欲しかったのもあるが、もし本当に赤井との間に何かしら繋がりがあったらどうするつもりだったのか…
まだまだ自分には危機管理能力が足りてないなと思い知った。




そして何より…




『ほんと…ズルいです。私の気持ちくらい、伝えさせてくれてもいいじゃないですか…っ!別に受け入れてくれなくてもいい、なんならこの関係もっ』




身勝手な己のワガママで、踏みにじってしまった彼女の決意。
恐らく好意を持ってくれているのだろうと思う。
そんな相手に、いいように使われるのだと思ったら…傷つけてしまったかもしれない。


それでも彼女の優しさに、甘えた。


そうまでしてでも、つなぎ止めたいと思ってしまった。
もうこの気持ちは警察学校時代の友人を救う為の錯覚ではない。
そんなものがなくても、もうとっくに坂巻 柊羽という存在に、惹かれているのは分かっていた。




「好きだ。」




思わず漏れたその言葉を、いつか伝えることが出来るだろうか。

今度は、大切な人を自分の手で守れるだろうか。

もう何も出来ないまま失うのはごめんだ。



「なら、近くに居られるようにしないとな…」



早く伝えたい。
あの時、柊羽が伝えたかった気持ちを遮ってごめんと謝りたい。
どうか、手遅れになりませんように。



「もう少しなんだ。さっさとかたをつける。赤井秀一…」



そう言い残し、安室は病院へと向かった。
/ 181ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp