第2章 喫茶ポアロにて
「さっきは悪かったな、つい言葉のアヤで…」
「別に平気。結果オーライだよ。」
「安室さんは平気そうだな?」
「んー、さっき以上の距離はやっぱり怖いけど。いい人そうだし、店員さんだって思えば同じ空間でも平気かな。」
「ふーん。あ、やべ!つい長居しちまった!これからアイツらと博士んちで約束なんだ。じゃな!」
「ん、気をつけてね~」
折角ホットサンドを分けてあげようかと思ってたのに。
相変わらず忙しないやつだ、と柊羽は走っていく背中を見つめていた。
「お待たせしました。あれ?コナンくんは?」
「ありがとうございます。なんか、友達と遊ぶ約束してたみたいで慌てて出ていきましたよ。じゃあ、いただきまーす!」
「はい、召し上がれ」
「んー、美味しい。てか前よりさらに美味しくなってる!」
「本当ですか?改良した甲斐があります」
「えっ安室さんが?すごい!」
「悔しいけど、ほんとーに凄いんですよ安室さん!」
「あ、梓ちゃん。やっと落ち着いたみたいだね?」
「はい、山は越えました!」
どうやら、こちらで一悶着やっている間にランチタイムが終わったらしく、客は少なくなっていた。
「忙しい時間に安室さんの足止めちゃって、すみませんでした。」
「柊羽さんは気にしないでください!一週間前までは一人でやってたことなので慣れたもんです。それに土曜日は平日ほどランチは混まないんです。柊羽さんを独占した安室さんには、午後沢山働いてもらいますけど!」
「それならお安い御用です。柊羽さんも溜まったお仕事に集中したいでしょうし、午後はゆっくりお仕事なさってください。」
「あー!またいいとこ持っていったー!」
「はいはい、早くランチの片付けしちゃいましょうか」
「もー!じゃあ柊羽さん、ごゆっくり!」
まるで夫婦漫才のようなやり取りが微笑ましくて、お似合いだな、なんて思った柊羽であった。
(ていうか、名前…自然に呼ばれたな…)
気にはなったが、別に嫌な気はしなかった。
その日はとても仕事に集中できて、あっという間にその日のタスクをこなすことが出来た。