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欲望ノ枷【R18】

第2章 幕開け




兄の言葉を耳にした瞬間、雪音はまるで聞こえなかったかの様な不思議そうな顔をする。
そして、小さくか細い声を漏らした。


雪音「ほん…と……?」


途切れ途切れな言葉には、確かな喜びと僅かな不安が入り交じっていた。
雪音の言葉に何の罪悪感も無く、煌は笑顔を浮かべ頷いて見せた。

すると、途端に輝く様な笑顔をより輝かせて、雪音は笑った。
兄と一日共に居れる。そんな些細な喜びが、雪音にとっては至上の喜びに等しいのだ。


雪音「ええ、ええ!私、お兄様と一緒に居たいです!」

煌「そう言って貰えるなんて、僕は世界一幸せな兄だろうね」


眩しい位の笑みを浮かべる妹を見て、煌は考えていた。
純粋無垢…そんな言葉こそが相応しい我が妹の愛らしい笑みがどう崩れ、この真っ白な肌がどれ程までに赤く熟れるのか。
小鳥の囀ずりの様で鈴の音の様な可憐な声を何処まで上擦らせ、甘い鳴き声を上げるかを。

妹を見る目が、自分でも分かる程に変わっていく。それは恋でも愛でも無かった。
ただただ欲するという、欲望と渇望。他人に貪られ、汚され蜜を垂らす様を見たい。そんな歪んだ感情であった。


煌「じゃあ…明日の朝食は、僕が作ろうか」

雪音「いいえ、お兄様。私、これでもお料理出来るんですよ?お兄様に、是非とも食べて頂きたいです…だから、私に作らせて下さい」

煌「じゃあ…可愛い僕の妹に、お願いするとしようかな」


任せて下さい!そう言って、雪音は胸を張って見せた。
雪音はいつもとは打って代わり、饒舌だった。
兄と共に居れる時間が嬉しくて仕方なく、浮かれているのだ。
兄の無慈悲で卑劣な策略など、露知らず…。

暫くして、煌は僅かに仕事を持ち帰ったと雪音に告げ、自室に入った。

雪音は明日が待ち遠しかった。久々に兄と共に過ごせる時間、これ以上に嬉しいものなど他に思い付きもしなかった。
自らの部屋は兄と共に選んだ家具で溢れていた。特にお気に入りなのは、17歳になった今でも、自分の体よりも大きな淡い茶毛のうさぎのぬいぐるみ。6歳の誕生日に兄が選び、父が買ってくれた物だった。
このぬいぐるみに触れていると、父と兄、二人が側に居る様な気がした。



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