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星条旗のショアライン

第5章 マイティ・ソー(MCU/AoU)



(5)

「レイン!」
「よしよし……。いい子だなぁ、フリーマン」
「……っ!」
ソーに思い切り抱き着いてしまった。初めに弁解しておくが全くもって俺の意思ではない。筋肉むちむちの身体に抱き着いて構わない権利を得たなら間違いなくスティーブの方を選ぶ。ソーではない。そう思うのに俺の身体はまたたびを得た猫のようにとろんとろんに脱力し、酩酊していて、身体の芯からソーを求めている。変な意味じゃない、文字通りに離れ難くて堪らなくなっている。普通に怖い。
「ソー!」
「キャプテン、見ていただろ。フリーマンは自分の意思で俺に熱い抱擁をかましている。邪魔するな」
「直前の会話にしてもお前が彼を操っているのは明白だ。離れろ。さもないと……」
ソーの酒浸りの熱い腕が腰に回ると痺れるような快感を生む。そのままあやす様に背を擦られれば全身が疼いて吐息が漏れてしまう。ああ、この野郎!
冴えていくきりの思考回路は如何にしてこの惨劇を終わらせられるかフル回転しているというのに、裏切り者の身体はソーに絡み付いて離れない。太い首で脈打つ血潮を見るとキスしたくなって、張り出した僧帽筋を見ると頬擦りしたくなって、彫刻のように美しい横顔を見ていると愛しいとすら思えてくる。えっ、誰か助けて。
「フリーマン」
「ひえっ」
急に頬を撫でられたかと思えば、端正な顔がグッと近付いてきて瞳を覗き込まれる。海を思わせる真っ青な瞳が大輪の花を回しながら探りを入れてくるから、怒声を発するスティーブや俺達へ無責任にキスを要求する酔っ払い共に意識を向けられないほど緊張してしまう。そして、やおらに身を離すと俺にしか聞こえない声量で耳打ちをした。
「やはりな。お前の中にはムジョルニアと同じものが入っている。でなければコイツが許すはずが無い」
「い、言わなかった事は謝る、すまない」
「謝る必要は無い。……だが、覚悟した方がいいぞ。お前は俺から逃れられない」



終わり?
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