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星条旗のショアライン

第3章 マイティ・ソー(MCU/DW)



体の中の人間であった部分が合金に挿げ替えられる音を聞きながら何も出来ないのは自身が非力だからに他ならない。
「いつまで、そこに"いるんだ、はやくっ、そい"つをつれ、て、にげな"いかっ」
「……そ、そうね、あなたの言う通りだわっ」
俺が長くは保たない事を察した聡明な女史は苦心しながらもなんとかソーを引きずっていく。そうだ、それでいい。冷静になれば人間はしっかり力を発揮する。冷静になれば……――。

(4)

「おいっ、じょし……っ!」
「それやめて! 私はジェーンっていうの!」
「っじばを、おっ、うし……っくそ、ことばならな」
「え……」
「じばをおれの、うしろに、はっせいさせ、られるっ、か!」
「”磁場”を?」
とうとう血を噛み始めた口元は俺から明瞭な言葉を奪う。口内に溜まった血の塊を吐き出して躍起になりながらも彼女に磁場の発生を求めれば、やはり頭の良い子だ、顔色を変えて直ぐに頷いた。俺はそれを見届けてからゆっくりと後退する。
(……今日は報告のみで済むはずだったんだけどなっ)
それにつれて戦艦も少しずつ垂直へと立て直していく。同時に身体を反転させながら背中で支えていた一点を肩へと移動させていき、徐々に鉄の鳥を逆方向へと押し倒していった。
「ぐ、おぉ……!!」
血肉が金属に侵される恐怖が無いわけじゃない。腕に激痛が走ってもこめかみや額が燃えるように熱くなっても頭痛がしても、やめる訳にはいかないだけだ。俺がヒーローである限り。
「ジェーンッ! いくぞっ!」
「いいわ、やって!」
力の限りを尽くして戦艦の装甲に拳を突き立てる。力の逃げ道を失った打撃は衝撃波を生み、辺り一帯の凄惨たる現状を物語っていた残骸は半径十メートル四方分が砂塵に還った。それに影響されて身を揺らした戦艦も本格的に向こう側へと傾き出す。
しかし黒鉄の鳥がこれ以上暴れ回ったところで被害が拡大しない確信を持っていた。女史が手元の装置を操作した途端、人為的に発生した磁場の乱れが生みだす波紋のさなかへと沈んでいったからだ。ぜぇぜぇと呼気があららいで意識が遠退く中、不可思議な『穴』が、敵も、混乱の原因も全てを雄大に抱き込んでいった。
「た、頼むからもうこんなトラブルは持ち込んでくれるなよ……」



終わり?
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