第20章 ルーカス・リー(SPvsW/第二話)
曰く、『過去付き合ってきた恋人七人の事を《邪悪な元カレ軍団》と称する』。また、『彼らを全て倒さなければラモーナと正式に付き合う事は出来ない』というものだった。要するにこれはスコットに課せられた試練なわけだ。本当にラモーナと交際したいなら乗り越えなければならない険しい山があると。
いやいやいや。益々もって俺を使って元カレを懐柔していくのは狡くないでしょうか。ゲイじゃないのに野郎に貞操を狙われてる俺が余りにも可哀想じゃないでしょうか。そんな能力を急に得たって嬉しくないし。
ラモーナだって付き合ってきた男達がゲイに転身していく様なんか見たくないでしょと縋るような視線を彼女に投げるけど、困った風に眉根を寄せるも「別に気にしないけど」などと突き放された。
「ル、ルーカスだって……い、いいい嫌だろ、お、俺にかかかか彼氏が増えるのっ!!」
「『善良な今カレ軍団』の話か? どれだけ穴兄弟が増えようが俺がトップの座であれば構わねぇさ」
「やだっ……うぇっ……やだ下品……最低……っ」
ぽこぽこぽこぽこと厚い胸板を叩きながら涙を零しているとルーカスが優しく抱き締めてきて震える背中を擦ってくる。テメェのせいで泣いてんだけど。
背後でスティーヴンが沈んだ声音で「レインが可哀想になってきた」と友人達の中で初めて俺に同情してくれたからメンタルが弱りきった今、危うく靡きそうだった。常識人だいすき。
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