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星条旗のショアライン

第19章 ルーカス・リー(SPvsW/第一話)



今にして思えばどうして簡単に振り切れたのかなんて考えなくてもわかる、これこそが目的だったからだ。共謀ってやつ。それもそうだ、そもそも奴らは仲間なんだから。
殆ど頭突きするみたいに突進したけど流石スケートボードを得意とするスターだ、全く身体の軸を失わずに抱き留めてくれた。頬をぎゅむぎゅむと押し付けた革のジャンバーが季節外れの雪を降らせる四月の夜風を浴びて冷たかったけれど、密着している内にほんのりと温かくなっていく。
(ん……)
思いのほか優しくぎゅっとしてくれるから調子が狂いそう。項を大きな掌で支える様に撫で上げてくるから甘やかされているみたいで不覚にも心を許しそうになった。実は鼻垂れ時代の地味なルーカスってこんな風に優しい人なのかもしれない。芸能界という荒波に揉まれる内に新たな人格を形成せざるを得なかったのかも。もしかしたら本当に哀れに思って俺を助けてくれたのかもしれな…………いやそれはないなこいつ思い切りGOサイン出してたもんな。
ちらりと見上げると透き通るようなブルーの瞳が俺を射る。うぅん、やっぱり顔は紛うことなくハンサムだ、吃驚するくらいハンサム。ウォレスが『彼の赤ちゃんを産みたい』と言う理由が少しだけ分かる。こんなハンサムに抱かれる人は女であれ男であれ幸せだろうな。

(10)

「助けた見返りはひとつだ。お前の『善良な今カレ軍団』のトップになりてぇ。良いだろ」
「お断りだ馬鹿」
前言撤回。もう色々前言撤回。何が優しい人だ、単に馬鹿なだけだ。短絡的で馬鹿。ラモーナに執着してスコットを襲っている現状から何も学んでない。そもそも今カレってなんだ元カレも居ないわ。俺はゲイじゃないし彼氏なんか作らない。それに軍団ってなんだよ、勝手に複数人にするな。今カレが何人もいたら不道徳だろ、この馬鹿。
ルーカスは俺が辛辣な台詞を湯水みたいに浴びせても子猫がにゃーにゃー鳴いているようにしか聞こえないのか、険の取れた表情で俺の頭を抱き締めて優しい手付きで『いいこいいこ』してくる。
「むーっ!」
「俺のリトルキャット」
「ん"い"い"ぃ"っ!」
時はそれなりに経過していたのか、気付けばスコットがルーカスのスタントチームを壊滅させていた。死屍累々の山から「セットに戻れ、ルーカス!」と吠えるスコットの方が断然賢くて格好良い。スコット早くこいつを倒して俺を助けてっ!



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