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星条旗のショアライン

第19章 ルーカス・リー(SPvsW/第一話)



第一話

「ウォレス、起きなよ」
とある昼下がり。資産のある男なのにスコットに合わせて剥き出しのベッドマットの上で眠っていた友人の肩を揺する。スコットはとっくに外出したのに彼はいつまで経ってもだらしのない寝姿を晒している。彼の新しい恋人が間違えて俺をベッドに引き摺り込む前に早く起きて欲しい。
「ウォレスってば」
「んあ……」
寝ていても起きていても眠そうな垂れ目が俺に向かって何度もゆっくりと瞬く。コートを着たまま眠ったらしくて、せっかくの上物がしわだらけだ。俯せの彼から上着を剥ぎ取るように脱がせると「いいね、君に脱がせてもらうのも悪くない」とか寝惚けながら囁くからケツを蹴飛ばしておいた。
「ウォレス、今日はルーカス・リーの追っかけするんだろ? 早く起きろよ、撮影終わっちゃうぞ」
「そうだった」
辺りに散らばる日用品を拾いながらバスルームに向かっていると、だらだらとマットの上で寝返りを打っていたウォレスはルーカス・リーの名前に反応して勢い良く上半身を起こした。
ルーカス・リーとはオスカーも夢ではないと囁かれている大人気の中堅俳優だ。ナンバリングが決まっている映画の主演を何本もこなす一方で、自身も得意とするスケートボードの自社ブランドを経営している。多岐に渡って才能を開花させた男だった。
ゲイであるウォレスは常々「彼の赤ちゃんを産みたい」と画面に向かって熱い吐息を漏らしているから、恐らくは大変男臭い外見なんだろうなと察している。本命は眼鏡の似合う男だったと思うんだけど、やはりゲイは男臭い感じに惹かれるのだろうか。ウォレスはボトム寄りだしな。
いつの間にか身支度を済ませていたウォレスは新しいコートをワードローブから抜いて颯爽と玄関に向かっていた。ルーカスの事になると目の色を変える彼に呆れもするけど、なんだか可愛くてやっぱり憎めない。振り返ると彼の恋人は未だマットに沈んでいる。不思議とアレは静かに家を去っているのだった。

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