第2章 スティーブ・ロジャース(MCU/As後)
それからしばらくは談笑をしていたが、時々通り過ぎる天使のお陰でスティーブが本題に入るか入らざるべきかで存外悩んでいる事を察して押し黙る。聞きたいことを聞けないなんて彼らしくない。スティーブは言葉を濁さない性格なのに。
そんな事を考えていると心情が表れていたのか、スティーブが俺の顔を見て観念したように弱々しく笑む。手持ち無沙汰なカップからトラベラーリッドを外して残りの飲み物を一気に流し込み、喉仏を大きく往復させて一息つく様から、意を決する気だと分かった。
「スティーブ、なにか言いたいことがあるんだろう」
「わかり易かったか」
「勿論」
「適わないな」
同じ笑い方なのに彼の場合は些細な違いがあって分かりやすい。それは事実だ。でもその少し寂しそうな表情は形容し難い。機微を計りきれずに見上げていると、スティーブは少しだけ表情を引き締めた。深刻そうには見えなかったが、なんだかこちらまで緊張してくる。
「ロマノフが言っていたんだ」
「彼女が? 何を?」
「『話し方がスマートだと伝えたらレインの表情が曇ったの。私、なにか悪いことを言ったかしら』って」
「……」
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