第18章 ケヴィン・ベックマン(GB2016/MCUクロス)
項垂れる俺を他所に次々と咀嚼し嚥下されていくモンブランとチョコレートケーキ。交互に頬張ったりして味が混ざる恐れを一切加味してない食べ方だ。指をベタベタにして口の周りも汚して……見た目が整ったハンサムなのに、中身はわんぱくな子供のようだ。
噛み合わない会話にケーキ泥棒に本能のままの食べ方。本来なら怒るべきところばかりなのに嫌味がなくてどこか可愛らしくもある。絆されてはダメなんだろう、でもそもそも彼と関わりを持ってしまった切欠は俺の失態なのだ。お詫びのつもりでケーキはそのまま彼の胃袋に納めてやる事にした。
「美味いか?」
「うん」
「口元、汚してるぞ」
「うん」
ぺろりと覗いた舌はチョコレートで汚れた方とはまるで別のところを舐めている。舌の届かないようなところを良く汚せたなぁと思いもするが、顔から頬張りにいく姿を見てしまうと頷ける。やんちゃだ。つい失笑してしまったが、彼は全く気にした様子はない。
「拭いてやるからこちらを向け」
距離を詰めて座り直し、紙ナプキンで口元を拭いてやる。何度か優しく擦ると綺麗になった。ついでにさ迷っていた手指を捕まえて一本一本拭いてやれば大人しく為されるがままになってくれて大変世話がしやすい。
(どこからどうみても見た目はソーだな)
だからこそ、世話を焼くとちょっとした優越感を得るのかもしれない。彼は愛すべき馬鹿と言われる時もあるが基本的にはなんでもこなせる男だ。他人の世話にはなりようも無い神様なのだ。瓜二つの顔を持つ他人で溜飲を下げようなんて人が悪いであろう自覚はあるが、この擽ったくなる心は歯止めを求めていない。
甲斐甲斐しく手を尽くす俺をにこにこしながら見詰める彼を見つめ返して、なんだか放っておけないなぁと思ったのが運の尽き。これが彼と俺の出会いである。
終わり?