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星条旗のショアライン

第15章 【2019年版】Xmas②(MCU/鷹and邪)



翌週の頭になって、俺のパトロネージュに身を焦がしている人物へクインジェットを一機出して貰えないかと頼んだ。民間のヘリコプターやジェット機には搭載されていないヘリキャリアの正確な位置を特定するレーダーを積んでいるのがクインジェットだ。操縦できるのは一部のS.H.I.E.L.D.戦闘員か秘匿契約にサインをしたパイロットのみとくれば、俺に心酔しているエージェントの彼に連絡を取るほか仕方ない。
普段であればこのような焦れったい思いをせずに搭乗まで漕ぎ着ける事ができるのだが、何せ俺は有給休暇中だ。フューリーが渋る俺から仕事用の通信手段を取り上げたせいで全てが手探りとなってしまった結果、諸々の手続きを終えて実際にクインジェットを飛ばして貰えたのは、それから一週間も経った後の事だった。

(2)

ヘリキャリアへと無事に到着した俺は操縦桿を握っていた戦闘員への礼も程々にクリントの元へと向かう。手土産を抱えながら彼にあてがわれた部屋の扉を叩くと、酷くやつれた顔をした彼が椅子を回して出迎えてくれた。「入れよ」と招く声に覇気がないから嫌な予感はしていたが、実際に対峙して現状が良く分かった。
「大丈夫か、クリント。顔色が悪い」
「あー……まあなんとかやってるよ。前の俺と違うところといえば血液の代わりにコーヒーが血管を巡ってるくらいかな」
お得意のジョークに自虐的な皮肉が混じるのは相変わらずといったところだが、眩しそうに目を細めて額に手を翳す仕草を見てしまうと相当な疲労が蓄積されている事が分かる。ボサボサで水分の抜けた髪に何日も剃っていない無精髭、目の下のクマや乾燥して割れた唇。病気でも患ってるのかと心配になるレベルじゃないか。
「色々持ってきたんだ、君の口に合えばいいが」
「……なんだこれ、スムージー?」
折り重なるように積まれた無数の書類の山を一瞥しながら持参した自作の菓子や簡易的な食品をせっせと並べていけば食べ物より何より真っ先に半透明のボトルに収まったグリーンスムージーに目がいったようだ。ひとつだけ異様な存在感を放っている事は認めるがメインはそれじゃないぞ。

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