第8章 苦い再会
それから数ヶ月が経った。
さぁ、と風が頬を撫でる。この感覚は久しぶりだ、帰ってきたという感じがする。
「久しぶりだなぁ、横浜……。最後に来たのいつだっけ」
ああ、逃げたのが最後か。ぽつりと呟く。わたしのコートがパタパタと靡いた。
ふと、わたしの後ろで砂利を踏む音がした。気配を感じなかった、誰だ? そう思い、警戒心を高くして振り向いた。だが、そこに居たのは可愛らしい和服姿の少女。
「……何だ、鏡花ちゃんか……」
「お姉さん……久しぶり」
「久しぶりね、元気?」
「うん、元気だよ。……帰って来てたんだね」
帰って来た。その単語を選ぶあたりに鏡花ちゃんの優しさが見える。わたしはふっと笑みをこぼした。
「あれから色々とあってね……。異能が変わっちゃったの」
「異能が変わった?」
鏡花ちゃんが怪訝な声を出す。確かに、異能が変わるなんて普通は有り得ない事だろう。だがわたしの異能を解放したのは(自称とはいえ)神様で、異能を取り替えたのもまた神様なのだ。イレギュラーが過ぎる。
「そ。まぁ色々あったのよ」
此れ以上は聞くな、と云う明確なラインを引くと、鏡花ちゃんは其れ以上は踏み込んで来なかった。じっとわたしを見つめ、ぽつりと云った。
「お姉さん、雰囲気変わったね……。前とは違う」
「髪切ったしね」
「其れもそうだけど……。ちらちら光が見えるのは?」
「光?」
わたしはきょとんとして周りを見た。嗚呼、と合点が行く。異能のせいだろう、わたしの周りには三つ四つほどの光が点々と舞っていた。
「……嗚呼、これ。わたしの異能よ」
「異能……?」
「未だ制御しきれてないのよ。使う機会無かったしね」
そう言うと、鏡花ちゃんはぎゅっと拳を握った。
「私、お手伝いする」
「何の?」
「異能を制御するお手伝い」
鏡花ちゃんの提案に、わたしは目を丸くさせた。ふっと軽く吹き出す。