第14章 社内会議
あの後、わたしは国木田さんに呼び出され、社員寮を宛てがわれた。部屋が足りない為、太宰さんの部屋になるかもしれないと言うことを云われはしたが。
取り敢えずその日は与謝野さんの部屋に泊まらせてもらい、次の日にわたしは出社した。
「お早うございます」
声を掛けると、「お早うございます!」と元気な声が。
「お久しぶりですね!」
「久しぶり、賢治くん。元気だった?」
「今日も僕は元気ですよ! 本日も張り切って行きましょう!」
「そうね、頑張ろう」
元気な賢治くんに押され、わたしは仕事を探した。が、何をすれば善いか皆目見当もつかない為、わたしは国木田さんに声を掛けた。
「あの、国木田さん。お早うございます」
「嗚呼、お早う。何か用か?」
国木田さんはパソコンと睨めっこしたまま此方を見ようとはしない。一寸引け腰になりながら、「何かする事ありますか?」と尋ねる。
「仕事か……。太宰の容態でも見ておけ」
「容態……ですか?」
「彼奴は倒れたとしても悪魔の如き生命力で脱走しかねないからな。見張ってくれると助かる」
「そこまでしますかね……?」
云いつつわたしはぺこりと頭を下げて医務室に向かった。コンコン、と扉をノックすると「誰だい?」と云う与謝野さんの声が聞こえた。
「如月です、太宰さんの監視……こほん、容態を見に来ました」
「嗚呼、入んな」
許可を貰ってから入る。パタンと扉を閉めると、ベッドに顔色の白い太宰さんが横になっていた。
「未だ寝てるから取り敢えず見ててくれるかい? 妾は他の仕事を片付けてくるさね」
「了解しました」
ベッド横の丸椅子を引き寄せて座る。そう云えば、今日は敦くんも鏡花ちゃんも見ていない。まだ来ていないのだろうか。
「ケホッ、コホッ」
「太宰さん? 大丈夫?」
太宰さんが少し咳をした。ゆっくり起き上がろうとする背中を支える。
「喉が枯れて、上手く話せない、んだ」
けほ、とまた一つ咳をする。わたしは立ち上がってコップに水を一杯汲んだ。
「飲んで下さい」
「有難う、頂くよ」
太宰さんは緩慢な手付きでコップを受け取り、水を口に含んだ。少しずつ水が減って行く。
全て空になったのは数分後だった。