第1章 1 (裏なし)
「お兄ちゃん…
どうして、ここに。
ウォール・シーナまで召集されたんじゃないの…?」
「ウォール・ローゼが突破されたという早馬が来た。
召集どころじゃねぇよ。」
「……………はぁ!?
もしかして、召集をひっくり返す何かって、ウォール・ローゼを巨人に突破させることだったわけ!?」
「んなわけねぇだろ。
手短に話す。
憲兵に巨人がいる。
それがひっくり返す材料だ。
今ごろエレンがそいつとシーナで戦ってるだろうよ。
ウォール・ローゼ突破は想定外だ。
ちっ…
タイミングが悪すぎる。」
憲兵に巨人?
シーナが戦場?
つーか人間が巨人に?
「頭が…ついていかないよ。」
「最悪なことに調査兵団の全員がウォール・シーナの巨人の対応にまわされている。
今ここを守るのは駐屯兵団とエルヴィンに頼まれた俺だけだ。
住民の避難が完了するまで、巨人に対応しなきゃならねぇ。」
「…………そんな。」
「ソフィア。
いいか?
今はローゼもシーナも戦場だ。
だがまだシーナの方がマシだろうな。
その地下道を通ってシーナまで逃げろ。」
「…………お兄ちゃんは」
「俺はここに残って巨人を倒す。
住民の避難が完了するまではな。
…………まだあれだけの住民が残ってんのか。
長引くな、チクショウ。」
見ると、門の辺りに住民が大量に群がっている。
あれじゃ避難はスムーズにいかないだろう。
「ソフィア。
もう話してる暇はねぇ。
はやく行け、死ぬぞ。」
そう言ってお兄ちゃんは私に背を向けた。
遠くに壁が破壊されているのが見える。
ざっと見て、30体はあそこにいるだろう。
「おい!!ソフィア!!
何やってんだ、さっさと逃げろ!!」
「お兄ちゃんだって、死ぬよ!!」
「――――――っ」
「あそこに何体いると思ってんの!?
30体はいるよ!!
それどころかもっともっと入ってくるよ!!
人類最強かなんか知らないけど、無理だよ!!」
「それがなんだ。」
「なんだ、って…」
「逃げろ。
いいな。絶対に逃げろ。」
そう言ってお兄ちゃんは歩きだした。
私に背中を向けて。