第8章 〜想いよ、届け〜
会議が終わると、家康と栞は
真っ直ぐに雪姫の元へ向かった。
栞は、ただただ心配で
家康は、熱と捻挫の治療の為に
しかし、この二人、初対面の時から
馬が合わない。
家康は、自分の幼少期が過酷だったため
素直さの塊のような人間は、
苦手だった。
自分には難しい、素直な行動を
いとも簡単にとれる奴には、自覚はないが
羨ましさが反転し、天邪鬼に火をつける。
そして、何より雪姫の側に同性だと言う
理由でいつも一緒にいられる栞への嫉妬
雪姫の心を開かせたのが、自分では
なく栞だったことが未だ悔しくて
恋愛感情は関係なく栞を少なからず
ライバル視していた。
一方、栞も捻くれ物の家康が
理解できなかった。
なんで素直に物が言えないのか
不思議で仕方ないし、かわいくない。
しおりには、心情を汲み取る力はあるので
三成ほどの天然ものではないが
栞は三成と似ている、
となれば、馬が合うはずがない。
そんな二人が大好きな雪姫を
取り合うのだから、諍いは
火を見るより明らかなのだ。
しかも、家康の御殿でしばらく同居人
になると思うと、ますます憂うつに
なる家康だった。
雪姫の部屋に行くと
一眠りした後だったらしく
まだ熱はあるが、夕餉も食べられ
顔色は、少し良くなっていた。
家康と栞が部屋に入ると
雪姫はゆっくり起き上がり
千草に羽織をかけてもらって
にっこり微笑み二人を出迎えた。
(//// いつ見ても、可愛い ////)
雪姫の笑顔に対する反応だけは
協調性の高い、家康と栞なのだ。
『お二人にも、あと千草にも
心配をかけてしまって、本当に
ごめんなさい』と深々と頭を下げた。
『挨拶は、いいから足見せて。』と家康。
そう言ってみた右足首は、倍に腫れ
上がり、外くるぶしは腫れに隠れて
見えなくなっていた。
『結構、酷いね。折れてないかみるから
動かすよ、我慢しないで。』
と動かすと、激痛に雪姫の顔が歪む。
栞は、責任を感じているところに
目の前で辛そうな雪姫をみたら
もう耐えきれず、ポロポロと泣く。
『栞さん、大丈夫よ。心配しないで』
と雪姫。
『あんたが、泣いたって仕方ないでしょ』
と家康。
『分かってるけどさー』と、またポロポロ。