第14章 〜運命の赤い糸〜
また、いっ時離れ離れになる。
戦だから仕方ないと思いつつ、家康の
今度の相手は少なからず憎しみを
抱いている今川の残党。
家康を見つめる桜奈の瞳が
不安の色に変わっていく。
憎しみの炎が家康の心を支配して
無理をしてしまいそうで心配だった。
急に、表情が曇る桜奈に
『どうしたの?』と言う家康。
『家康様、必ずご無事で桜奈の
元にお戻り下さいね。』
『うん、分かってる』そう言って
また桜奈をぎゅっと抱きしめ
『俺の帰る場所は、桜奈の
ところしかないから、心配しないで。
桜奈をひとりぼっちにしたり
悲しませるようなことなんて
俺は絶対しないから。』
『はい。信じてお待ちしています』
お互いの温もりを確かめあい
家康と桜奈は暫しの別れを惜しんだ。
それから桜奈は栞と三成と合流し
安土城へと帰っていった。
三成は、栞と桜奈を見て『何故でしょう?
お二人とも、今日は、一段とお美しいですね』
と言った。純粋で素直な含みの全くない
言葉にギクッとする桜奈と栞。
『そ、そうかなぁ・・』
(三成君って、時々鋭いよね)と焦る栞。
『い、いつもと変わりないかと』
(あっー、見透かされるようで
恥ずかしいですわ)とやはり焦る桜奈。
三成は、至って純粋に思ったことを
口にしただけだったが、『?』と
言う顔で、小首傾げた。
桜奈と栞は、昨晩、お互いの
身にあったことにピンッときて
お互いに良かったねと示し合わせる
ように、恥ずかしいそうに微笑み
合った。
そんな二人を
(本当に、お幸せそうで、何よりです)
と三成は、柔らか笑みを湛えながら
見つめたのだった。