第13章 〜君とでなければ〜
その家康の姿を見て
また、愉快そうに笑う信長。
『家康、これで分かったであろう?
貴様の許嫁を本気で怒らせると
わしなど可愛く思える程の
鬼になるからの、気をつけろ』
『はー、確かに』と桜奈を
見上げた。
『酷いですわ、信長様まで
私を鬼呼ばわりなんて』と
心外です!と訴える
顔する桜奈。
『なに、なに?何の話?』と
栞が聞いてきた。
信長が『桜奈を本気にさせると
世にも恐ろしい、鬼になると言う話じゃ』
と言うと
栞も流すような目で桜奈を見ると
『あー、だねー』と含み笑いをした。
『まぁ、栞さんまで!酷い。
分かりました!鬼で結構です。
私を本気で怒らせたらどんな
鬼にが出てくるか分かりせんので
皆様、ご注意下さいませ!』
むぅっとした顔をする桜奈。
家康は、(うん、そうするわ、怖いし、
心臓に悪いからね)と心の中で呟く。
『さっ、冗談はこのへんにして
家康様、急ぎ傷の手当てを
致しましょう。』と言う桜奈。
二人は、信長に一礼し天幕へと戻った。
二人の背を見つめる信長と栞。
栞は、なんの気なしに信長に
質問した。
『信長様は、桜奈さんを
正室にしたいって思わなかった
んですか?』と言ってからハッとし
(やだ、私、何を聞いてんのよ///)
と自分が何故そんな事を聞いたか
分からずおどおどし始めた。
そんな栞の姿に信長は、フッと笑うと
『あやつを女として見たことは
一度もない。それどころか
男だったらと、何度思うたか。
男なら、歴史に名を残す武将に
なっていただろうにとな。』
『あぁ。分かります!桜奈さんが
男であの信念の強さなら
誰より強く、優しい武将だったかも。
(信長様と同じくらいに)
でも、家康といる桜奈さんは
とっても幸せそうだから、やっぱり
女性で良かったんですよ』そう言って
栞は、微笑んだ。
『そうじゃな。でないとわしの
最大の恋敵だったことは間違いない
からの』と微かに呟く。
『えっ、何か言いました?』と栞
『いや、なんでもない』と栞を見つめ
穏やかな笑みを浮かべた。