第11章 〜決意〜
家康が部屋に入ると泣き腫らした
栞の顔を見て
『それにしても、酷い顔だね』と言うと
『えへへ、まあね。でも桜奈さん
独り占めして、家康にも悪い事
したね、ごめんね』と栞。
『ったく、ほんと。栞のせいで
こっちは桜奈切れで
一日中イライラだったよ。
でも、なんか吹っ切れたみたいだね。
いいんじゃない、栞は、栞のしたい
ようにすれば』
『うん。そうするつもり。ありがとうね。
あと桜奈さんもお返しするね』
と家康の方へ桜奈を押しやった。
『当然。』
『ところで、家康様、私に何か
御用がおありでしたの?』
『用がないと、会いにきちゃダメなの?』
『いえ、会いに来て頂けるだけで
嬉しいですよ』と、恥ずかしそうに
目を逸らし微笑む。
(/// やっぱ可愛い///)と家康と栞。
『戦に行く事が決まったから報告に来た』
『えっ?』驚いて、大きく目を見開いた
桜奈だったが直ぐに真剣な顔に戻った。
『ご出立は、いつでございますか?』
『十日後』
『分かりました。ご無事でお戻り下さると
信じてお待ちしております』と一礼した。
しかし、重ね合わせて握り締めている
手は、小刻みに震えていた。
『うん、待ってて、必ず武功をあげて
桜奈のところに帰ってくるから。
全部、片付いたら祝言の準備で忙しくなる
から、覚悟しといて』
『はい。承知致しました』
少し、強張ってはいたが必死に
笑みを浮かべる桜奈。
『じゃ、もう行くね』
『栞、仕方ないから、もう少し
桜奈を貸しといてあげる。
桜奈をよろしく』
『うん、わかった。家康も気をつけてね』
『栞もね。』
栞が未来へ帰るならこれが最後に
なると思いそう言って家康は栞の
部屋を後にした。
家康が出て行った襖を眺めていた桜奈
『桜奈さん、大丈夫?』と栞。
『栞さん、私は、大丈夫です。
それより、栞さんにお願いがあります。
家康様に新しい羽織を仕立てたいの
で、御指南頂けますか?
それを着て、出陣して頂きたいのです。』
『分かった。時間があまりないから
ちょっと、根を詰めないといけないけど
私も協力するね。』
『ありがとう栞さん、宜しくお願い
しますね!師匠!』と微笑む桜奈。