第9章 〜記憶の欠片〜
雪姫が桜奈だった。
その衝撃は、家康を真実を一刻も早く
知りたい衝動に走らせていた。
(でも何故、信長様は、桜奈を助けたんだ
敵軍の将の娘なのに、なんで?
あの時の家老達の企ては、本当だったのか?
いや、鷹山殿に限ってそんな方では絶対ない)
答えの出ない問答を繰り返しながら
気づけば家康は、天守閣に到着していた。
本当の事が知りたくて、雪姫の手紙を
持って尋ねてきたのだ。
『信長様、家康にございます
お聞きしたき義がごさまいます
お時間を、頂けないでしょうか?』
いつもより数倍は改まって尋ねた。
『入るがよい』と言われ部屋に
入った。
『で、雪姫から本当の名でも聞いたか?』
(くっ、相変わらずのお見通し感だな)
『はい、昨日色々ありまして、その///雪姫と
想いを通じ合うことができました///
そのあとに、この文の存在を知り
名を聞きました。この文は、俺が鷹山殿が
策に嵌められることを知り、検閲を
通す為に、俺が桜奈に恋文として送った
ものです。残念ながら、上杉城は
攻め落とされ、その時桜奈も
亡くなったと思っていました。
でも、信長様が桜奈の命を救って
くれていた。これだけは、本当に心から
感謝申し上げます。』
(いつなく、素直ではないか・・まぁそれほど
嬉しかったと言う事か・・・)
『それで、貴様がわしに聞きたいこととは』
『信長様と鷹山殿との関係です。雪姫の
ことを聞きに来た日、信長様は盟友の
忘れ形見とおっしゃった。
俺は雪姫が桜奈ではないかと
疑っていた。
そうであって欲しいとさえ思った。
けれど、それでは鷹山殿を嵌めた
あの家老達が言っていたことが
嘘でなかった事になる。
鷹山殿が信長様に通じて裏切ろう
としていたことになる。俺は
絶対にそんなことは、信じられなかった。
だから、詳しく聞くのを諦めた。鷹山殿を
疑う真似などしたくなかたので。
でも、雪姫が桜奈だと分かった今
信長様と鷹山殿には、特別な関係が
あったとしか思えない。あの日何が
あったのか、全て教えて頂きたくて
参りました。本当の事を教えて下さい
お願い致します』
と深々と頭を下げ
そして、頭を上げたあと、真っ直ぐな
翡翠色の瞳で信長を見据える。