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《イケメン戦国》初恋〜運命の赤い糸〜

第8章 〜想いよ、届け〜


雪姫には理由は分からなかったが
記憶を無くして以来、桜奈と呼ばれると
あれほど胸を抉られるような
堪え難い痛みと切なさを感じていたのに
家康に名を呼ばれた瞬間、あの文と紅葉を
眺めた時のように、深く温かな何かに
包まれるような感覚を覚えた。

家康は、『信長様に文と紅葉の事で
確認したい事があるから
ちょっとだけ預からせて』と
文と紅葉を持って
『また、暫く安静。今度走ったら
本気でお仕置きだからね』と
念押しして部屋を後にした。

家康か部屋を出ていった後
自分の身に一度に起こった
奇跡のような出来事に呆然としていた。

何度も口付けされた、自分の唇に
手を当て、夢でも見ているのでは
ないかと、信じられなかった。
(家康様が、私を想っていて下
さってたなんて・・・)
込み上げる喜びとは別に、家康が涙を
流していたことが気になった。

(家康様に、桜奈と呼ばれて
不思議と安堵と嬉しさが込み上げた。
前は、名前を呼ばれると
あんなに辛くて、苦しかったのに・・・
何故なのでしょう?)

そして、栞の言葉が思い出された。
【雪姫さんが竹千代さんを大好き
だったんなら、もし出会ったら
何か感じるんじゃない?
記憶は、なくても心はそれを
ちゃんと覚えてる気がするもの】

本当にそうなら、笑うことのできない
私が初めて会った家康様に笑みが
零れたのも頷ける。信長様や千草に
だって笑いかけることが難しかったのに・・
初めて会った日に私は
家康様に何かを感じてたの?
もしかして、家康様が竹千代様だから?
でも、まさか、そんなあり得ない・・・

しかし、どんなに考えても
答えは、出なかった。それより家康と
想いが通じ合えたことの、幸せの
方が大きすぎてその小さな疑問は
幸せの中に沈んで消えていった。

一方、自室に戻り、桜奈から
預かった文を見ながら
家康自身も信じられない二重の
喜びに呆然としていた。

(雪姫が俺を想っていてくれた。
信じられない。俺は、自分の気持ち
だけでいっぱいいっぱいで、
しかも雪姫が桜奈で
あっー、どうなってんだ?)
とにかく、明日信長様に全て聞こう!
桜奈の命の恩人で
育ての親で、俺に再会させてくれて
はっー、もう、これで俺は、
信長様に一生頭が上がらないな)
と、小さなため息をついた。

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