第4章 情報を求めて
「……逃げるなら最初からやめとけばいいのに」
ため息をつくリオはローを見る。
「ありがと。殺さずに済んだ」
「さっき男が苦しんだのはお前の能力か?」
ローがそうう尋ねるとリオは自分の手を見る。
「心臓の血の流れを操作したの。私じゃ男に力で敵わないから」
「なるほどな。一時的な心筋梗塞みたいなもんか」
「あれも調整しないと死んじゃうから死なない加減に捜査して、必要に応じて…ね」
それ以上が意味する言葉をローはわかっていた。
おそらく、シルバークロウになってから自分を守るために数度、彼女は人を殺めてきているのだろう。
「とりあえずここを離れよう。変なの現れたら大変だし」
「そうだな。一度船に戻るぞ」
2人はそう言い合うと港に停めている船へと向かった。
その夜、翌日の仕込みを終えたリオは船長室にいた。
ローと寝る場所を共にしても何も感じなくなったのか普通にベッドに横になってローの医学書を読んでいた。
(この血管はこの臓器に作用か…能力で応用できるかな…)
医学書の内容によっては自身の能力向上につながる。
それに気づいてからは空いた時間はほとんど読書に費やしていた。
船長室の主であるこの船の船長は航海士と航路について話し合ってて不在。
帰ってくるまで思う存分読書をしたいが、今日はいつも通りの食事作りに加えて本業である情報屋として歩き回っている。そのせいか自然とあくびが漏れる。
(もうちょい…)
読んでいる医学書の内容が一番いいとこ。
襲ってくる睡魔に負けないと抗いながら本を読んでいくが、降りてくる瞼にはかなわず目を閉じてしまう。
ローが船長室に戻ってきたころにはすっかり眠っていたリオ。
「こいつはまた…懲りねぇ」
ベッドにうつぶせの体勢で枕に顎を乗せながら眠っているリオ。
その手元には開かれた本があったので読書を読んでいたのだろう。
以前同じ体勢で本を読んだまま寝て次の日身体を痛めた経緯がある。
ローはため息をつくと本を手に取り、テーブルに開いたまま置いておくとリオの体勢をうつぶせから仰向けに直す。
甲斐甲斐しく世話をしている自分に思わず笑ってしまう。
仰向けになったリオに毛布をかけると自分はデスクに向かい、読みかけの医学書を読み始めた。