第20章 彼女が眠る地へ
「……師匠は、アッシュに情報を言えば助けるって言われたの。でも、情報は言わなかった…師匠は最期まで情報屋として生きた…」
「はっ…シルバーらしいじゃねぇか」
リオは石の近くにあるナズナの花を指差す。
「師匠を埋める時、私はあの花の花言葉を師匠に誓ったの」
「ナズナ……私の全てをあなたに捧げる、か。昔シルバーから聞いた事がある」
「私は師匠への誓いは忘れてない。責任も覚悟もあの人の信念も全部もらったわ。でも、一人の人間として…女として…守りたいものも出来た。それがロー、そしてハートの海賊団のみんなよ」
「そうか…」
リオは手に持っているブレスの赤い石を指でなぞる。
「師匠はそのブレスをずっとつけていたわ。理由を聞いたら大切な人にもらったって言ってた。殺されたあの日も…」
「…シルバークロウ、悪ぃが一人にしてくれねぇか」
「……わかったわ。この木箱も中身もスパローの好きにしていいから」
リオは手に持っていたブレスを木箱に入れる。
そしてローはリオを抱き上げ、スパローから離れていく。
2人がいなくなったのを確認し、スパローは口を開く。
「……なぁ、シルバー…お前楽しかったか?」
自分が弟子として育てようとして最終的には同じ立場に立った優秀だったシルバー。
情報屋として最期まで生きて散った彼女。
そして彼女の全てを引き継いで自身が名付けた名を守る彼女の弟子。
シルバーなら笑顔でこう言うだろう。
『早かったけど悔いのない人生だった!』
スパローはリオが置いて行った木箱の中にあったシルバーブレスと自分が持っていた青い石が埋め込まれたブレスを自分の左手首に着ける。
「俺も…もう人生に悔いはねぇ」
スパローの静かな声が辺りに響き、消えていった。