第6章 同じ顔。…違う顔?(O)
遥「好き嫌い、あります?」
聞かれたから顔上げたら、彼女は料理の方を見てて。目が合ったら今度は俺が料理に目を落として。
そっから好き嫌いの話題にちょっとなって、それで彼女、みんなの好みとか把握して、量とかもイイ感じに分けてくれてたんだろうね。…たぶんだけど。
だって誰も残さなかったし、足りないとか多いとか、コレ食えないとか、なかった気がする。いつもニノのが相葉ちゃんの皿にポイッてなるのに、そういやそれもなかったな…。
そう考えたらすげぇな!お店の人だから?全然気にならなかったけど、めちゃくちゃ気遣い細かい人だったのかも。
手もね、何て言うか…動きがなめらかで、『あ、キレイ』って思ったんだよ。無駄がないし、上品っていうか…。そうだ、そうそう。動きだ!ソレです。そこに見入っちゃったんだわ。だから、手そのものに特徴ってのは…
「…」
そう言えば、傷みたいなのがあったかも。右手の甲と、小指の爪の下あたりに。微かにだけど。
意外と憶えてんな。さすが俺(笑)。
ていうかね、それだけ見てたってことですよ。自然に記憶されるくらい、しっかりと。
お。そうそう、ちょうどね、こんな感じ。ちょうどこのあたりにうっすら傷が…
「……」
え?
何気なく見た左隣の席の人が、まさにそんな手。