第1章 失クシタ記憶
「君…誰?」
目の前に現れた男の人は、怪訝そうな表情で私を見下ろしている。
綺麗な緑色の長い髪を束ね、見たこともない和装に身を包んでいた。
「…」
ここって東京だよね。
「あ、あの…コスプレ、ですか??」
?「は?」
私の質問に対して、更に不機嫌さが増していく。
周りは暗すぎるし、お腹は空いたし。
帰りたいのに、自分の家がどこなのか思い出せない。
?「あのさ」
「え?」
?「何?その変な格好…」
何って、制服だけど。
この制服ってそんなに変かな。
むしろ、可愛いと思う…
?「足なんて出して、みっともない」
冷たい言葉を言い放ち、大きな建物に戻ろうとする彼を咄嗟に呼び止めてしまった。
「あ、あの!!!」
?「…何?」
ええっと…
どうしよう、何か話さなきゃ。
「と、泊めてください!!」
?「は?」
あれ…今、何を口走った??
?「俺がなぜ君を泊めなきゃいけないの?面倒なことは嫌なんだけど」
「泊まる…場所が…ないん、です」
今の私は、とにかく必死だった。
どうにかしなきゃ。
こんな所で飢え死にするなんて嫌だよ。