第2章 ジェラシーウルフ【M×S】
【S☆side】
『今から行く』
抑揚のない簡単な言葉
俺が断らないって分かっているからこその断定的な一言。
「はぁ〜……」
一人の部屋に、大きなため息がこだまする
今から来る、って…
俺明日早いんだけど…
リビングの時計の針は
午後11:35を指していた
「……お風呂、入ってる時間はあるかな?」
俺は急いで風呂に入り、
いつも通りシャンプーを2回して、体を洗うと湯船に沈んだ。
………
怒ってたな…あの声は。
電話でも、その向こう側のあいつが
どんな顔をしてるかなんて
手に取るように分かった
あ……
あの電話、マンションからだよな?
出先だったとしたら、
直ぐ来ることも考えられるけど…
……
いや。
マンションからに決まってる。
きっと、テレビを観てたんだ
それで怒ってあの電話。
理由は分かってるよ。
ロケをしたときから、
オンエアされたら、
きっとあいつは怒りまくるだろうって…そう思ってたから。
まあ、想定内だって言えば想定内なんたよな…
「…ふぅ〜……」
俺は今一度大きく息を吐いて
立ち上がった
身体を拭いて部屋着に着替え、
急いで髪を乾かした
パウダールームの大きな鏡には、
完全にオフの顔した俺が映っている
「さてと。」
そろそろ来るかな?
裸足でキッチンに入り、
冷蔵庫から良く冷えたクリアアサヒを取り出すと、計ったように来客を知らせるチャイムが鳴った。