第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
男として生まれ、おなご一人誘う言葉も知らぬとは……
我ながら情けなく思う。
さとを目の前にすれば、更にどうしたらいいのか、分からなくなり尻込みしてしまうやも知れぬ…
しかし……
さとは…
さとだけは己のみで…
己の心のままを、
己の言葉だけで、
さとに、己の………
「翔様」
「…和……」
「大丈夫ですよ、翔様。あなた様の誘いを断るおなごなど、江戸にはおりませぬ」
「和…」
私が余程思い詰めた顔をしておったのだろう…和は笑顔で私を励ましてくれた。
そうこうしているうちにあっという間に私たちはお大師様の門の前にいた。
さとは来るだろうか?
私との約束など、もう忘れてしまっているのではないか?
覚えてはいても、怪しんで来ぬのではないか?
不安ばかりが胸をよぎる。
「ささ、参りましょう…」
「…うむ」
三日前に約束した時間までは、まだ少しある。
私がさとを待つことになるだろう…
……
そう思っていたのに、白く群れ咲く白い牡丹の前に佇む青を見たときは、息が止まるかと思った。
「翔様…」
和也に言われるより早く、気が付いたらさとの居るの方へと歩き出していた。
私の姿を見ると、さとはゆっくりと小首を傾げて会釈をよこした。
「…待たせたか?」
「いえ、今来たところです。それに…」
「なんだ?」
「まだ時間ではないので…少し、驚きました…」
「さとこそ、早いではないか?」
「…なんだか、気が急いてしまって…」
そう言ったさとは、ぱっと頬を赤く染めた。