第22章 卒業なんか嫌い【S×N】
初めから男が好きだった訳じゃない。
中学の時は、言い寄ってくる女子と付き合ったりもした。
結局、面倒くさい女子の嫉妬にうんざりして、俺は男子校に入学した。
そこにいたのが櫻井翔先生だった。
大学を出たばかりの先生は、俺のクラスの副担。
当たり前だけど先生は男だし、最初は何とも思わないし、好きになる対象じゃなかった。
運命の日は、初夏のような5月だった。
担任が研修の日。
HRに悪ノリしたみんなの希望で、缶けりをすることになった。
掃除用具入れの中に隠れて、誰かが鬼の缶を蹴ってくれるのを待つ俺の元に、突然飛び込んできた人…
それが翔先生だったんだ。
「ちょっ///狭い…」
「シーッ!黙って!」
そう言うと先生は、俺の肩を抱き寄せ身体を密着させると、外の様子を伺った。
……うっ、嘘だろ~!?
…ドキドキが、大きくなる。
鬼に見つかるかもしれない緊張感じゃない。
密着する翔先生から、汗の匂いと混じって何とも言えないいい匂いが…
眩暈がする……
あ…俺、汗臭いんじゃないか?こんな近くだし、絶対匂うよ!
どうしよう~///
先生はこんなにいい匂いなのに…
俺は…
その時、中庭の真ん中辺りから歓声が上がった。
鬼が見事、缶を守ったのかな?
「捕まえたみたいだな…」
先生は、そう言って立ち上がった。
それまでガッチリ抱き締めていた俺を、あっさりと離して…
「行くか!二宮」
「あ…はい…」
立ち上がって膝の埃を払う俺に、
「お前、イイ匂いすんだな」
翔先生はそう笑った。
………この瞬間。初めて知った。
それまでの俺のは、恋じゃなかった…
だから、これが俺の『初恋』だった。