第5章 愛、シあう
ぼんやりと、暗闇の中で目が覚めた。
見慣れた「息子たちの」部屋にいる。
状況が整理しきれない、が、少なくとも、これから自分たちはもう「親子」ではなくなるだろうと、直感で悟った。
体がほとんど動かない。
視線だけを暗闇に慣らすようにめぐらす。
と、扉から光が漏れた。
二つの影。
「母さん、起きたみたいだ」
「体が動かないのは、もう少しの間だけだよ。我慢して」
カチ、と部屋の明かりが灯る。
つけたのは兄のほうだった。
「母さん…って呼ぶの、今からやめにしようか。ウミ」
「いいね、賛成……。ねえ、ありさ。そろそろ、体が熱くなってくると思うんだけど…どう?」
きれいな、昔の彼らの父親によく似た顔が、楽しそうに問いかける。
「あ……」
「まだぼーっとする?はは、かわいい」
ちゅ、っとお遊びみたいなキスを落としたのは、弟のウミ。
「あ、抜け駆けだ」
「ごめん、兄さん。かわいくて、ついね。
……ほら、こっちでありさを半分こ、しよ?」