第10章 離れても
「悪い…別れてほしい…」
「…うん、わかった」
中学3年最後の日に、私は大好きな男の子と別れた。
「あ…」
「あやちゃん、どうかした?」
「なんでもない。行こう」
高校3年のある日、あるイベントのポスターを見つけた。そこには大好きな男の子が載っていた。
「ようやく着いた…」
時間が空いてたからポスターに書いてあったイベントを観に行くことにした。でも、会場が変更になったとのことで、公民館で行き方を教えてもらって向かった。
「はぁ…」
会場は山の上のお寺で、かなり階段が長い。地元のおじいさんやおばあさんも見に来ていて、その人たちはイベントのスタッフの人か地元の人あたりだと思う人が手伝ってあげていた。私も声をかけられたけど、年齢的にも頑張らないといけないと思ったのもあってお断りした。
「やっと着いたっ」
長い階段を登りきると、そこには出店がいくつも並んでて既にお祭り状態だった。大きな舞台を見ると観客席は結構埋まっていた。
「わぁ…すごいなぁ…」
私の身長が低いこともあるから観客席じゃなくて舞台が見える位置を探した。なんとか場所を見つけるとそこから舞台を眺めた。
たしかプログラムではライブがあるって書いてあったけど、どんなライブなのかな。楽しみだな。
「あ、出てきた」
ライブが始まった。舞台上にはたくさん男の子が出ていたけど、彼はすぐにわかった。新選組のようなデザインの着物の衣装を纏って、刀を振るいながら、歌い、舞う姿はとても輝いていた。
「心を伝えていくことは」
――― 俺、アイドル目指してみようと思う ―――
中学の時に進学の話になった時に真剣な表情で言うものだから、私は…
「今、夜明けを告げる鐘が鳴り響く」
あんなに生き生きとして、輝いている。見ているお客さんたちの笑顔がいい証拠だ。
「Traditional sprit makes Revolution」
きっと、ここまで来るまでにつらいことも悲しいことも楽しいことも嬉しいことも色々とあったんだろうな。
「新しい息吹感じ…進んで行け」
あぁ…よかった…今日ここに来てみることができて良かった。
でも、やっぱり胸が痛い。寂しい。一緒にいられなくて辛い、な…
「はぁ…」
目が熱く感じて、ライブが終わると同時に私はお手洗いを探しに歩いた。