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短編集/鬼の木漏れ日

第1章 出産逃避行



「……あや、好きだ。ずっとこの気持ちは変わらねぇ…だから、ずっと一緒にいてほしい」
「……私、嫌な女だよ?」
「いい女なのは俺がよく知ってる」
「紅郎くんや明音ちゃんに辛い思いさせちゃうよ?」
「したくてそうしてないだろ」
「……1人で暴走して逃げちゃうような女だよ?」
「暴走する前に捕まえてやる」
「……」

 身体の向きを変えられて、明音ちゃんを潰さないように気をつけて向き合うようにされて抱きしめられた。久しぶりにみた紅郎くんの表情はとても切なそうだった。

「あや…返事聞いていいか?」
「……本当にいいの? 私なんかで…」
「あやがいいんだよ。ずっとな…」
「……もしいいなら、いていいなら、一緒にいたい…」

 溢れ出る涙が止められなかった。

「えっと…本当によかったの? こっちに移って…」
「移動は車があれば問題ないしな」
「まあ、あちらより立地も土地もあるしな」
「紅月はどこにいても変わらぬぞ」

 あれから紅郎くんが結婚の報告をしたことでマスコミが騒いでいたけど、不思議なことに私のところにまで来ることはなかった。
 それどころか同じ都内というのもあってか、なんでか紅郎くんがこっちに来て一緒に住むことになった。紅月の活動拠点、専属事務所もこっちで作ることになって蓮巳くんや神崎くんもこっちに来たのでした。
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