第6章 君の手料理
「いらっしゃいませ、4名様ですね。お席は…」
「カウンターで」
「え、でも…」
「頼む」
「……かしこまりました。カウンター、ご新規4名様です」
紅月のレッスンを終えてから、全員連れてあやのバイト先のカフェに入った。出迎えてくれたのが、タイミングが良いのかあやだった。どうやら今日はホールも兼任しているようで、俺がカウンターで押すと戸惑いながらも案内してくれた。
ここのカフェのキッチンはカウンターキッチンになっていて、カウンター席だと調理風景が見られるようになっている。あやの調理風景を見るならこれほど最適な場所はないだろう。
俺はあやが休みの日に出かけ先の休憩する時に何度か一緒に入ったことがあるくらいで、あやの働きぶりを見たことがなかった。
「失礼いたします。こちらお冷とおしぼり、メニューになります。今日はいっぱい連れてきたんですね、鬼龍くん」
「ご無沙汰してます。後輩が水瀬の調理姿を見たいと言って…たしか今日はシフトに入ってる日と聞いてたので来ました」
「なるほどね。もう少ししたらホールの子がおつかいから戻るからすぐ見られるよ」
店長ともあやを伝って何度か話をしたことがある。穏和なのだが、見た目の割に歳を食っている。見た目だけなら40代でも通りそうなのにもう還暦を迎えているらしい。
「鬼龍、あの人は…」
「ここの店長だ」
「わぁ、雰囲気のあるお店ですね…」
「鬼龍殿、水瀬殿はおらぬのか?」
「さっき案内してくれたのがそうだぞ?」
「な!?」
「え?」
蓮巳と話していると、神崎が辺りを見回してあやを探していたようで教えてやるとあんずの嬢ちゃんも一緒に驚いていた。
「ウェイトレスじゃないんですか?」
「あいつ、キッチンメインだぞ? たまにホールも入ってるらしいけどよ」
「まさかあの御仁であったとは…たしかに見た目と年齢が合わぬな…」
「お客様、ご注文はお決まりですか?」
「まだだ。後ほど頼む」
「かしこまりました。お時間的にオススメなのはこの辺りになります」
「わかった」