第5章 愛されて頂けますか
「そんなこと、言ってない………っ」
「はいはい、分かりました」
「ハイセっ」
ニコニコ顔で頭を撫でるハイセを睨みあげる。
「………真っ赤な顔してその目、なんですか、やっぱり誘ってます?」
「話!話がしたいの!いいから退きなさい!」
下から見上げるこの体勢、恥ずかしいったらないんだから。
はーっ、と、小さくため息をついて。
やっとハイセはあたしの上からいなくなった。
「………車」
「はい」
「車、呼んでちょうだい。帰るわよ」
「それでしたら、ちょうど車で来てますので」
「え」
「送りますよ」
「………」
にっこりと目を細めるハイセに、何故だか拒否れなくて。
仕方なく乗り込んだのはまさかの助手席で。
初めて乗る助手席にも。
初めてみる、ハイセの運転する横顔にも。
何故だかずっと心臓は鳴りやんでくれずに、いた。
「………なんです?」
「え」
「珍しいですか、助手席は」
「………」
「それとも、惚れなおしました?」
「!」
な……っ。
「ほ、れた覚え、ないしわざわざ直すとこ、ないわっ」
ぷい、っと。
思い切り視線を窓へと向ければ。
後ろからはくぐもった笑い声。
なんなの。
なんでこんなに、余裕なのよ。