第5章 愛されて頂けますか
素直に頭を撫でられているあたしを見て、大人たちはとてもにこやかに、部屋を後にした。
式場はどこにする、だとか。
式はいつがいいか、とか。
勝手に盛り上がりながら出ていく大人たちをただ黙って見ていたあたしはたぶん、かなり偉いと思う。
別に甘んじてハイセに頭を差し出したわけでもないし。
大人たちの言う、「仲がよろしい」わけでもないのだ。
ただ。
ただあたしは。
邪魔の入らないところ、で。
ハイセと話がしたかった。
それだけのために、ちゃんと我慢が出来るようになった自分を褒めてあげたくなる。
「ハイセ」
「はい、お嬢様」
「説明、してくれるわね、ハイセ」
ドラマなんかだとここで、ししおどしの『カポーン』なんて音が聞こえて来そうなくらいにあいた間。
やっとゆっくりとハイセが口を開いた。
「お嬢様は、たかだか一介の執事に、旦那さまが大切な一人娘を嫁にやるなとどと本気でお思いでしたか?」
「え」
「そんなことあるはずないでしょう。少し考えればわかることだと思いますが」
「は?」
「だから、子供なのです」
「―――――はぁ?」
何。
喧嘩?
買うわよ、それ。
「………んぅ?」