第5章 愛されて頂けますか
こんな密室。
どこに逃げ場あんの。
しまった。
こんなことまでまさか、計算済みじゃないわよね。
「お嬢様」
「………」
顔ごと、窓へと向けたまま、口をつぐむ。
「ご自分でメイクされたのですね」
「え」
「いつものメイクと、違いますから」
「…………下手?」
ゆっくりと、上目遣い気味にハイセを見上げれば。
「とっても、お上手にございます。」
「………っ」
「これは、僕が教えたメイクですね」
なんで。
なんでそんなに嬉しそうに笑うの。
「お嬢様」
窓に両手をついて。
その腕にあたしを囲うと。
「返事、は?」
答えなんてわかりきったように、余裕に微笑んで。
ハイセはあたしをまっすぐに見つめた。