第5章 愛されて頂けますか
「…………は?」
長く感じた、次の赤信号までの距離。
掌を絡めたまま、どうしていいか悶々と葛藤すること数分。
徐にハイセがそう、切り出した。
「…………ちょ、……はぁ?」
「ずっとずっとお慕い申し上げた方と、想いが通じようとしてるのに我慢なんてしていられません」
「は?待って、通じようとしてないから!」
気づけば。
止まったのは赤信号なんかじゃなくて。
どこかの公園か。
埠頭か。
とにかく辺りは一面、真っ暗だ。
「………っ」
やられた。
そうだよ。
この人抜け目ないんだよ。
ほんとにもう、完璧すぎて目の前がチカチカしてくる。
「お嬢様」
ハイセの聞きなれたテノールが。
耳元から溶かすように頭の中へと入っていく。
「今すぐお返事下さい。ノーなら、このまま帰ります」
「…………っ」
ずるい。
ずるいずるい。
「ハイセの、バカ」
「はい」
「変態執事」
「………返事、は?お嬢様」
「―――――――こんなの、ずるい」
「お嬢様より12年、長く生きておりますゆえ。女性はずるい男性が好きでしょう?」
「………っ、知らないっ」