第6章 距離
ユカは、俺の横を歩いている。
美人で男の誘いに乗らないユカだけに、
街の者たちは、振り返っている。
だが、ユカは気にした様子はない。
この状況は、嬉しかった。
『紅茶屋まででいいのか。』
『はい。ありがとうございます。』
紅茶屋の近くまでくると、
ある柴犬がこちらを目掛けて走ってきた。
『オト!!!』
ユカが飛び切りの笑顔で、柴犬を抱きしめる。
『今日も待っててくれたのね。ありがとう。いい子ね。』
『お前の犬なのか。』
『はい、紅茶屋の裏庭で、いつも待っててくれてるんです。』
柴犬は久しぶりだ。
思わず、可愛さに手がでる。
嫌がらず、嬉しそうに尻尾を振った。