第12章 心
『エルヴィン、入るぞ。』
『ああ。』
団長室には、優しい紅茶の香りが充満していた。
『こんな時に、団長様は紅茶か。』
『こんな時こそだ。
リヴァイも飲むといい。
いい考えが浮かんでくるはずだ。』
『あいにく今は、紅茶を飲む時間さえも惜しい。
ユカのことだが、
兵舎にいて、エルヴィンの近くにいる方が、
安全だと思う。』
『いや、それはできない。』
『どういう意味だ、ここにいるのが一番だろ。』
『私も安全とは言えない、
中央憲兵は、調査兵団を隈なく叩きにくるはずだ。』
『じゃ、どうする。
俺たちと共にしても危険が伴う。
ましては、試験だって間近だ。』
『ああ。彼女を他に匿う場所があればな。』
俺には、検討もつかない。
エルヴィンに託すしかないのか。