a fragrant olive【ONE PIECE】
第2章 彼との出会い。
低い声だけど人懐っこい感じの声。
表情豊かな声の抑揚。
私は彼の姿を知らない。
「今日も異常なし。じゃあまた明日様子を見に来るよ」
「ありがとうございました」
彼はそう言って私の部屋を出て行った。彼は私の担当医みたいなものだ。私は先生と呼んでいる。
”今日は草のにおいがする。お日様の暖かさもあるし、晴れなんだなぁ”
私はとある事情から目が見えない。
光を感じることすらできない。
ただ真っ暗な世界。
目が見えないことで鼻や耳が良くなったのが救い。
「あ、甘いお花の匂い…。見に行こうかな」
ふと感じた甘いの香りに誘われ、私はベッドから立ち上がり、離れたテーブルに置いていた鞄と目の代わりの杖を持って外に出た。
”今日は天気が良いけど風は少し冷たいな”
杖で障害物を探しながら先ほど感じた匂いのもとへ歩いていく。
季節は秋。この時期に咲く花といえば…。
「ここかな…。強い匂いがする」
目的の花の前に来たのか、匂いが強くなった。
甘い花の匂い。
どこか腰掛けられないかと杖で探そうとした時
「おっと、先客がいたのか」
低い声、でも怖さを感じない声が聞こえた。