a fragrant olive【ONE PIECE】
第3章 来訪者
私は大好きだった色とりどりの光景が真っ赤に染まったあの日。
ここに来た日はよく覚えている。
涙が枯れるのではないかと思うくらい泣いた。
痛みも苦しさも
みんなが感じた物に比べたら…
目が見えなくなったのは3~4年前だったか。
目が見えなくなってから急激に体調も悪くなった。
胸や全身が痛んだり、呼吸ができなくなったり、酷い時は意識がもうろうとする。
2週間近く寝込むこともある。
先生に聞いても原因はわからないって言う。
本当は原因を知っている。
先生に私が治せないことも。
でも先生は必死に私を治そうとしてくれる。
ここにいる他の大人とは違う。
日に日に自分の体が自分じゃなくなるのが怖い。
私は…いつ…
ふと目を覚ますと部屋に金木犀の匂いと彼の匂いがした。
「目ぇ覚めたか?」
「あ…どうして…」
声ですぐわかった。彼だ。金木犀の彼。
なぜここがわかったのだろう。
「建物の場所は聞いてたし、1週間全く来ないから気になってきたら体調崩しているって聞いてな」
「すみません…いつもの事なんで…」
そういえば建物教えていたな…。
ということはここが療養所ではない事はバレている。
私が起きようとすると彼は横になってなさいと言うのでお言葉に甘えて横になる。
それからしばらく彼とお話した。他愛のない会話。
ここにいる理由とか、私の事は一切触れない。
外出できない私には彼との会話はとっても楽しい時間だった。
気づいたら心地いい彼の声にウトウトしてしまい、寝るものかと頑張って起きようとしたが
“眠いなら休め。おやすみリオ”
その言葉を聞いて私は夢の世界に旅立った。